📚 業界ノート

ユニチカ株式会社

【経済・繊維製品】繊維製品企業バリュエーション分析更新 2026-10-11

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目次
  1. 1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か
  2. 2. 財務の実力
  3. 5期財務推移
  4. 収益性・安全性・効率性と9項目チェック
  5. 3. 市場評価を読む — バリュエーション
  6. 現値とNC 2軸
  7. EV/EBITDAの比較
  8. 倍率ベース感応度
  9. 4. 同業比較 — 差分の論点
  10. 5. リスクと論点
  11. 6. バリュエーション統合と論点整理
  12. 乖離の構造分析
  13. 条件分岐シナリオ
  14. 監視ポイント
  15. M&A・出資検討の論点
  16. 7. 学びのポイント
  17. 📚 着眼点1: 一時損益と継続利益を分ける
  18. 📚 着眼点2: 優先株は普通株1株当たり利益を変える
  19. 📚 着眼点3: 売上縮小と残存事業の採算を分ける
  20. 参考情報
  21. ガバナンスと大株主
  22. データ時点と出典

ユニチカ株式会社(3103)銘柄分析レポート

SUMMARY

ユニチカは高分子・機能材料・繊維を展開し、FY2026/3の営業利益105.5億円の大半を高分子が稼ぎました(FY2026/3決算短信)。
FY2026/3の自己資本比率35.7%へ回復しましたが、純利益181.5億円には特別利益・損失が含まれ、通常収益力とは分けて見ます。
2026-10-09終値基準の普通株時価総額838.3億円、FY2027/3予想PER18.1倍。
C種優先株の転換・取得条件と希薄化後EPSが資本構成の最大論点です(第1四半期決算短信)。


1. 事業構造 — 何で稼ぐ会社か

業界全体の構造は 化学業界基礎ガイド を参照。本章はユニチカ固有の事業構造に絞る。

FY2026/3は高分子、機能材料、繊維、その他の4区分で報告されました。売上構成では高分子が約半分ですが、利益は高分子にさらに強く偏ります。

セグメント(FY2026/3) 売上高(億円) 売上構成比 営業利益(億円) 営業利益率
高分子 563.95 47.57% 94.29 16.72%
機能材料 336.95 28.42% 16.03 4.76%
繊維 283.99 23.95% -5.15 -1.81%
その他 0.73 0.06% -0.18 —
セグメント合計 1,185.62 100.00% 104.99 8.85%
連結 1,185.63 100.00% 105.49 8.90%

(出典: FY2026/3決算短信。セグメント利益と連結営業利益の差額には調整額等を含む。)

高分子はフィルム・樹脂、機能材料はガラス繊維・活性炭繊維・ビーズを扱います。
用途評価と顧客工程への適合が採用継続を支えます。
繊維はFY2026/3売上283.99億円ながら営業赤字で、利益は高分子に集中しました。

FY2027/3第1四半期の報告区分別実績は次の通りです。

報告区分(FY2027/3 Q1) 売上高(億円) FY2026/3 Q1比 営業利益(億円) FY2026/3 Q1比
高分子 170.19 +22.0% 30.75 +31.6%
機能資材 49.47 △48.4% 10.67 +136.9%
その他 21.41 — △0.39 —

会社は電子材料・自動車需要、高付加価値品、価格改定を要因に挙げています。
機能資材の減収には事業撤退が含まれます。
FY2027/3 Q1から報告区分が変わったため、FY2026/3の年次区分とは単純比較しません(第1四半期決算短信)。

素材販売は数量と単価で売上が決まるフロー型です。
包装・工業・電子材料需要が数量を、原料・エネルギー・物流・設備保全がコストを動かします。
価格改定の遅れと稼働率低下が重なると固定費負担が利益率を押し下げます。
顧客別売上集中度・契約期間は非開示です。

FY2026/3の売上債権回転42.7日、棚卸82.6日、仕入債務37.9日、CCC87.3日(期末残高法)はFY2025/3の129.6日から短縮しましたが、事業縮小を含みます。
計算は売上債権÷売上高×365日、棚卸資産・仕入債務÷売上原価×365日で、期末残高を用い平均残高ではありません。
設備投資42.38億円/減価償却33.67億円は1.26倍、研究開発費32.40億円で、工場維持と用途開発に資金を要します(FY2026/3決算短信)。

2024年11月公表の事業再生計画に沿い、低採算事業の譲渡・撤退、固定費削減、財務負担軽減を進めました。
2030年3月期の会社目標は売上700億円・営業利益65億円で、通期予想とは区別します。
売上・従業員の減少には範囲変更が含まれ、需要減や生産性向上と同一視できません(事業再生計画資料、FY2025/3決算短信)。

C種優先株の発行はREVICの再生資金を導入し、債権放棄とともに財務再建を支えました。一方、議決権・優先配当・転換条件は普通株と異なります(C種優先株資料)。

素材の採用障壁は顧客工程への組み込み

試作・品質認定・量産条件まで調整した素材は、設備に合わせた専用部品のように切替時の検証負担を伴います。ただし、顧客別集中度や契約期間は非開示です。

2026年9月発表のU-Imide UMI-0は、20GHzで誘電正接0.0019を示す低誘電ビスマレイミド樹脂です。量産採用・売上寄与は非開示のため、製品開発上の進展として扱います(製品発表)。

2. 財務の実力

FY2024/3は営業赤字でしたが、FY2025/3に黒字化し、FY2026/3は減収下でも営業利益が増えました。財務再建の進捗と通常利益の再現性は分けて追います。

5期財務推移

指標 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3 FY2027/3会社予想
売上高(億円) 1,147.1 1,179.4 1,183.4 1,264.1 1,185.6 840.0
売上高YoY(%) — +2.8 +0.3 +6.8 -6.2 -29.2
営業利益(億円) 60.1 13.3 -24.8 58.5 105.5 80.0
営業利益率(%) 5.2 1.1 -2.1 4.6 8.9 9.5
親会社帰属純利益(億円) 22.2 1.0 -54.4 -242.8 181.5 50.0
EPS(円) 33.32 -3.13 -94.41 -421.18 310.33 80.35
総資産(億円) 1,914.0 1,900.0 1,863.3 1,494.3 1,507.0 —
純資産(億円) 430.7 439.2 382.5 162.3 540.4 —
自己資本比率(%) 21.6 22.2 19.7 10.4 35.7 —
現金及び預金(億円) 184.2 96.1 101.9 131.2 473.1 —
借入金合計(億円) 938.9 934.4 921.5 921.4 546.9 —
営業CF(億円) 86.7 5.1 81.7 62.9 56.1 —
投資CF(億円) -89.9 -80.9 -75.4 -31.5 343.1 —
財務CF(億円) -42.1 -16.6 -2.8 -4.4 -61.2 —
設備投資(億円) 76.1 76.4 68.1 27.3 42.4 —
減価償却費(億円) 52.5 54.2 61.4 52.4 33.7 —
研究開発費(億円) 36.0 37.6 36.0 32.2 32.4 —
普通株配当(円) 0 0 0 0 0 0

(出典: EDINET DB FY2022/3〜FY2026/3財務履歴、FY2023/3決算短信、FY2026/3決算短信。FY2023/3純利益102百万円と普通株EPS△3.13円は優先配当等により単純対応しない。FY2027/3は会社予想。)

FY2027/3第1四半期(2026-04-01〜06-30)は売上241.08億円(FY2026/3第1四半期比△22.0%)、営業利益41.62億円(+46.4%)、経常利益43.22億円(+135.7%)、純利益40.56億円(+211.3%)。

通期予想840億円・営業80億円・経常65億円・純利益50億円への進捗は28.7%・52.0%・66.5%・81.1%、会社予想は据置。
為替差益4.07億円、支払利息3.17億円(FY2026/3第1四半期は4.35億円)、基本/希薄化後EPS70.35円/7.81円。
撤退事業が減収に含まれ、四半期を年率換算しません(Q1決算短信)。

取得できた会社開示には、過去3期について同一条件で照合できる会社予想と実績の連続系列がありません。予想精度は算出せず、予想の据置と四半期進捗を確認します。

FY2026/3純利益181.53億円は特別利益368.54億円・損失153.77億円、約120億円の債権放棄や資産処分を含み、ROEを通常収益力へ延長できません。
投資CF343.12億円も売却等を含むため、反復的な現金創出は営業CF56.14億円と設備投資後FCF13.76億円で見ます(決算短信)。

FY2026/3末は現預金473.14億円に対し借入金546.92億円。
自己資本比率は10.4%から35.7%へ上がり、借入金は374.48億円減少しましたが、債権放棄・資産売却・C種払込み・事業譲渡が寄与しました。

収益性・安全性・効率性と9項目チェック

指標・チェック FY2026/3実績 基準・業界目安 判定・読み方
自己資本比率 35.7% 健全性チェック基準40%超 ❌ 基準未達、FY2025/3の10.4%から改善
有利子負債と現預金 546.9億円 vs 473.1億円 借入金<現預金 ❌ 借入金が73.8億円上回る
流動比率 136.7% 健全性チェック基準150%超 ❌ 短期負債の余裕を継続確認
利益剰余金 195.9億円 0円超 ✅ 正の残高
営業CF FY2024/3〜FY2026/3全期プラス 3期連続黒字 ✅ ただしFY2026/3は56.1億円へ減少
普通株配当 FY2024/3〜FY2026/3全期0円 3期継続支払い ❌ FY2027/3予想も0円
EPS比較 FY2026/3 310.33円 vs FY2025/3 △421.18円 FY2025/3実績を上回る ✅ 黒字化。ただし特別損益を含む
ROE 52.4% 8%超 ✅ 算術基準は超えるが一時損益の影響大
営業利益率 8.9% EDINET旧繊維製品中央値参考4.6% ✅ 旧分類との参考比較。現行は化学
総資産経常利益率 6.9% 業態・期による FY2026/3実績。再生後の持続性は要確認
CCC 87.3日 短く安定するほど運転資金効率が高い FY2025/3の129.6日から短縮、事業縮小を含む
設備投資/減価償却費 1.26倍 更新・成長投資の内訳で判断 FY2026/3設備投資42.38億円、減価償却33.67億円

(出典: EDINET DB財務系列、FY2026/3決算短信。健全性スコア78/100はEDINET DBの機械判定値。自己資本比率・ROE等の定義は同社開示に従う。)

9項目中5項目は形式上の基準を満たします。EPS・ROEは特別損益、営業利益率は旧業種分類の参考比較です。再編後の利益と営業CFの継続性を確認します。

3. 市場評価を読む — バリュエーション

**株式市場は普通株とC種優先株を分けて見る必要があります。
**普通株の時価総額にはネット株数だけを用いました。
EDINET DBの期末marketCap・PERは種類株を含む時点固定値のため採用していません。

現値とNC 2軸

指標 FY2025/3 FY2026/3または市場値 定義・基準
普通株終値 — 1,454円 2026-10-09終値
普通株ネット株数 — 57,653,755株 発行57,752,343株−自己株98,588株
普通株時価総額 — 838.3億円 終値×普通株ネット株数
FY2027/3予想EPS・PER — 80.35円・18.1倍 1,454円÷80.35円
FY2026/3 BPS・PBR — 581.43円・2.50倍 1,454円÷581.43円
FY2027/3普通株予想配当 — 0円・利回り0% 会社予想
標準NC -790.20億円 -73.78億円 現預金+短期有価証券−借入金
標準NC比率 -94.3% -8.8% 各期標準NC÷現在の普通株時価総額
広義NCAV -558.38億円 -74.90億円 流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計
広義NCAV比率 -66.6% -8.9% 各期広義NCAV÷現在の普通株時価総額
CN-PER — 19.7倍 予想PER×(1−標準NC比率)

(出典: 2026-10-09の株価履歴、FY2026/3決算短信・EDINET DB財務系列。時価総額は終値と普通株ネット株数から算出。短期有価証券は独立開示なしとして0扱い。)

標準NCは現預金等−借入金、広義NCAVは流動資産+投資有価証券×70%−負債合計です。
両者は改善してもFY2026/3はマイナスで、正の純現金・清算余力を示しません。
改善には事業売却・債権放棄・C種払込みが含まれます。

FY2027/3のC種優先株配当予想は1株3.18円、普通株配当予想は0円です。種類株の優先配当と普通株への配当は別の権利として扱います(FY2027/3第1四半期決算短信)。

FY2026/3 EBITDAは営業利益105.49億円+減価償却33.67億円=139.16億円。
CN-PERは18.10×(1−(△8.8%))=19.69倍です。
PER×EPS、PBR×BPSはいずれも約1,454円で普通株価格と整合します。

EV/EBITDAの比較

企業・基準 時価総額(億円) EV算定上のネット負債等(億円) EBITDA基準(億円) EV/EBITDA
ユニチカ FY2026/3実績・普通株基準 838.3 73.8 139.2 6.55倍
ユニチカ C種払込額参考加算 838.3 273.8* 139.2 7.99倍
帝人 FY2027/3営業利益予想+FY2026/3償却費 3,164.9 約2,549 約1,410 約4.05倍
東洋紡 FY2026/3実績 1,453.4 約2,243 525.4 約7.04倍

(出典: 帝人株式会社、東洋紡株式会社、2026-10-09株価履歴。*C種は払込総額約200.0億円を参考加算した感度で、現時点の償還請求額ではない。帝人は予想営業利益に実績減価償却を加えた代理値、東洋紡とユニチカは実績ベース。)

帝人のEV/EBITDA分母はFY2027/3営業利益予想+FY2026/3償却費、他2社はFY2026/3実績です。C種払込額加算値は契約価値ではなく感度です。

倍率ベース感応度

評価軸 倍率 根拠・読み方
PER・比較範囲下限 7.0倍 帝人の予想PER。第1四半期に一時利益の影響があり、直接の適用基準にはできない
PER・比較中点 13.9倍 帝人7.0倍と東洋紡20.8倍の単純中点。会社規模や利益構成を調整していない参考値
PER・比較範囲上限 20.8倍 東洋紡の予想PER。異なる利益構成を持つ比較上の上限側
ユニチカ予想PER 18.1倍 FY2027/3会社予想EPS80.35円に基づく現値倍率
EV/EBITDA・比較範囲 約4.05〜7.04倍 帝人予想代理値から東洋紡実績の比較範囲
ユニチカEV/EBITDA 6.55倍 FY2026/3実績、普通株基準
C種払込総額参考加算時 7.99倍 C種の現在評価額を示さない感度
自社の5期PERレンジ — 赤字期・特別損益期が混じるため、比較可能な通常利益倍率レンジを設定しない

(出典: 既存検証済み帝人・東洋紡レポート、EDINET DB分析。倍率は相対比較の観察レンジで、円建ての企業価値・株価水準には換算していない。)

DCFは掲載しません。会社根拠に基づく5期FCF予測、WACC、永久成長率がそろっておらず、前提を任意に置くと見かけの精度が高くなるためです。

4. 同業比較 — 差分の論点

帝人・東洋紡を比較対象とし、規模・年度差を注記しました。全上場中央値は同一時点・定義で未取得のため補完せず、相場観も本表に集約しています。

指標 ユニチカ 帝人 東洋紡 全上場中央値 良い目安 評価コメント
時価総額(2026-10-09、億円) 838.3 3,164.9 1,453.4 未取得 — ユニチカは普通株だけを計算。優先株を含む総企業価値とは異なる
FY2024/3売上高(億円) 1,183.4 9,604.6 4,142.7 未取得 — 事業範囲・年度差を含む比較
FY2025/3売上高(億円) 1,264.1 10,054.7 4,220.3 未取得 — ユニチカは再生計画下の譲渡・撤退を含む
FY2026/3売上高(億円) 1,185.6 8,731.9 4,215.6 未取得 — ユニチカの事業譲渡を含むため過去の会社規模との比較に注意
FY2027/3予想PER 18.1倍 7.0倍 20.8倍 未取得 一律基準なし 帝人は一時利益要因、ユニチカはC種希薄化が論点
PBR 2.50倍 0.76倍 0.68倍 未取得 1倍以下は資本効率の点検軸 ユニチカは一時損益で回復したBPSを分母にする
FY2026/3 ROE 52.4% -22.1% 5.5% 未取得 8%超は一つの目安 ユニチカの値は特別損益の影響が大きい
FY2024/3営業利益率 -2.1% -0.5% 2.2% 未取得 同一業態・構成で比較 ユニチカは再生計画の実行前後を含む
FY2025/3営業利益率 4.6% -7.1% 4.0% 未取得 同一業態・構成で比較 ユニチカの改善には価格改定・コスト削減等が寄与
FY2026/3営業利益率 8.9% -8.1% 6.6% 未取得 同一業態・構成で比較 ユニチカは利益の高分子偏重を併読
FY2026/3自己資本比率 35.7% 39.6% 34.0% 未取得 40%超は一般的目安 ユニチカは再建後も現金より借入金が多い
FY2027/3普通株予想配当利回り 0% 3.05% 2.43% 未取得 営業CFとの両立 ユニチカ普通株は無配予想、C種優先配当は別枠
標準NC比率(FY2026/3) -8.8% 約-80.5% 約-154.4% 未取得 プラスが望ましい 各社の現預金・借入定義を基にした概算
EV/EBITDA 6.55倍 約4.05倍 約7.04倍 未取得 同業・設備投資と照合 帝人のみ営業利益予想+実績償却の代理値
CCC(FY2026/3) 87.3日 比較資料なし 比較資料なし 未取得 低く安定が目安 FY2025/3比の短縮は事業範囲変更を含み、単独評価しない

(出典: EDINET DB財務系列、各社決算資料、2026-10-09のユニチカ、帝人、東洋紡株価履歴、既存検証済み社内レポート。FY2027/3予想PERは各社会社予想に基づく。)

ユニチカはFY2026/3の営業利益率で東洋紡を上回りましたが、高分子への利益集中と特別損益があります。
**同業倍率の単純な順位付けはせず、継続利益、潜在株式、設備・財務条件をそろえて読みます。
**第7章の相場観は本表に集約しました。

5. リスクと論点

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的な影響シナリオ 対応状況・確認事項
原料・エネルギー価格と為替 高 中〜高 原料高、円安、価格転嫁の遅れが重なり高分子・機能材料の利益率を圧迫 為替差益等の営業外要因と製品採算を分けて確認
収益源の集中・再編後の需要 高 中 高分子の販売数量・単価低下や繊維の赤字継続が会社計画に波及 売却事業を除いた継続事業の数量、ミックス、稼働率を確認
C種優先株の権利行使 高 中 転換や金銭取得の条件次第で普通株の希薄化、資本負担、利益配分が変化 REVIC保有分115.5百万株。2027-08-01以降の契約条件・行使状況を確認
砂防シートを巡る訴訟・品質問題 中〜高 低〜中 追加請求や補償が発生すればキャッシュと利益に影響 2026-07-13に1件和解、条件非公表。別請求の解決状況は最新開示で確認できず
資産売却一巡後の財務・設備更新 高 中 一時的な現金流入が細り、借入返済と工場更新の両立が難しくなる 営業CF、設備投資、現預金、借入金を継続確認

(出典: FY2026/3決算短信、FY2027/3第1四半期決算短信、2026年7月13日和解開示、C種優先株関連資料。発生可能性は開示事実を基にした定性整理。)

再建実績と通常収益は分ける

FY2026/3は純利益181.5億円、自己資本比率35.7%へ回復しましたが、特別利益・損失、債権放棄、資産処分、C種払込みが関与しました。
通常収益は営業利益と営業CFで、資本構成はC種の配当・転換・取得条件で確認します。

NCの改善を余剰資金と誤認しない

FY2026/3の標準NCは△73.78億円、広義NCAVは△74.90億円です。
資産売却後も営業CFの積み上がりと普通株還元が進まなければ、黒字化が資本効率へ結び付かないバリュートラップが残ります。

6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

FY2027/3予想PER18.1倍、CN-PER19.7倍、FY2026/3普通株ベースEV/EBITDA6.55倍です。
倍率間の印象差にはFY2026/3特別利益とFY2027/3純利益予想の反動、C種の利益配分への影響が表れています。

**市場評価の前提は、FY2027/3営業利益80億円が再編後の規模で続くかです。
**売上予想840億円(FY2026/3比△29.2%)は譲渡・撤退後の範囲変更を含み、第1四半期進捗52.0%も均等な収益計上を意味しません。
機能材料が高分子を補い、繊維赤字が縮むかを見ます。

EV/EBITDA6.55倍はC種を含まず、払込総額を加えた7.99倍は資本条件の感度です。
FY2027/3の優先配当予想は1株3.18円と開示済みですが、将来の累積配当権、転換・金銭取得権の行使、取得対価や普通株数への影響は契約条件と権利行使に左右されます。
純利益やROEを平常値とみなさず、継続利益・負債・C種条件を併せて確認します。

条件分岐シナリオ

上方条件 — 高分子の採算維持、機能材料の利益増、繊維赤字と再編固定費の縮小が進めば、営業CFで裏付けられた利益が評価の中心になります。
UMI-0量産採用とC種の行使・対価・希薄化への対応が明確になれば、比較倍率の上側を参照する根拠が強まります。

基準条件 — FY2027/3会社予想に近い着地となり普通株無配が続けば、予想PER18.1倍と、普通株基準のFY2026/3 EV/EBITDA6.55倍(C種払込額参考加算時7.99倍)は利益持続性と資本構成を含む倍率です。
利益集中、営業CF、設備更新、C種条件の見通しが比較倍率を左右します。

下方条件 — 数量・価格転嫁が計画を下回り、高分子の利益低下と繊維赤字が残れば、PERよりネット負債、EV/EBITDA、PBR、残存設備の収益性が重視されます。
資産売却後のC種資金負担が不明瞭なら、再建後利益の評価軸は慎重になります。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026年11月10日 FY2027/3第2四半期決算(公式IRカレンダー掲載) 営業利益進捗、通期計画の変更、営業CF、セグメント利益構成
2026年12月31日 FY2027/3第3四半期の対象期間末 需要、製品価格、為替、棚卸資産・債権の変化。決算開示日は別途確認
2027年2月5日 FY2027/3第3四半期決算の時期目安(会社未公表) 過年度の2月上旬日程を参考にした確認日。通期予想の前提、特別損益、資産売却の進捗
2027年3月29日 期末配当の権利付き最終日の暫定日 3月31日を基準日と仮定したT+2計算。普通株の会社予想は無配。配当の有無と正式基準日を確認
2027年3月31日 FY2027/3期末 継続事業売上、各セグメント採算、現預金・借入金、設備投資、C種の状況
2027年5月14日 FY2027/3通期決算の時期目安(会社未公表) 過年度の5月中旬日程を参考にした確認日。通期実績、FY2028/3会社予想、特別損益、普通株配当
2027年6月25日 定時株主総会の時期目安(会社未公表) C種の議決権・取得条件、取締役構成、資本政策の説明
2027年8月1日 C種優先株の権利行使開始に関する契約上の期日 最新契約・変更開示、行使状況、対価、普通株希薄化、資金調達への影響

(出典: ユニチカIRカレンダー、C種優先株条件説明、JPXのT+2説明。未公表の決算・総会日は過年度日程の目安。3月29日は3月31日基準日を仮定した暫定計算。)

M&A・出資検討の論点

取得側の許容EVには借入金・現預金に加え、C種条件、工場更新、環境対応、退職給付、訴訟債務が影響します。C種を普通株と同列に扱うと必要資金と支配権を見誤ります。

高分子の加工技術・顧客認定製品、機能材料の用途開発は承継価値の候補です。
顧客離反、統合時の供給停止、技術者離職、設備整理費、環境債務はシナジーを損ないます。
DDでは製品・顧客別採算、設備年齢・稼働率、知財、品質、訴訟残余債務、C種契約、資産処分後CFを確認します。

7. 学びのポイント

📚 着眼点1: 一時損益と継続利益を分ける

FY2026/3は純利益181.5億円が営業利益105.5億円を上回り、特別利益368.5億円・特別損失153.8億円を計上しました。
家財売却の一時収入と月給を分けるように、債権放棄・資産処分を毎期の利益と混ぜず、営業利益・営業CF・純利益を並べます。

📚 着眼点2: 優先株は普通株1株当たり利益を変える

普通株ネット株57.65百万株に対し、REVIC保有のC種は115.50百万株です。
FY2027/3第1四半期は基本EPS70.35円、希薄化後7.81円でした。
普通株予想EPS80.35円だけで利益配分を理解せず、優先配当、議決権、転換・金銭取得条件を確認します。
株数に加えて契約上の対価算式が重要です。

📚 着眼点3: 売上縮小と残存事業の採算を分ける

FY2026/3は売上高が6.2%減少した一方、営業利益率は8.9%へ上昇しました。
事業譲渡・撤退で売上の範囲が変わり、価格改定やコスト削減も進んだため、売上成長率だけでは継続事業の競争力を読めません。
セグメント利益、数量・単価・製品ミックス、固定費、運転資本をつなげると、縮小後にどの収益源が残ったかを追えます。

相場観は第4章の比較表に集約しました。
同じ時点の全上場中央値は取得できておらず、空欄を推定値で埋めていません。
倍率だけでなく、事業構成、特別損益、優先株、設備投資という比較条件を揃えることが必要です。

参考情報

ガバナンスと大株主

FY2026/3有価証券報告書・株主総会資料では取締役8名中3名が社外取締役、監査役3名中2名が社外監査役でした。
REVICはC種優先株の保有者で、2026年3月末には115,504千株・66.70%を持ちます。
普通株の所有構成とは異なる議決権・優先条件があり、事業再生の遂行力と普通株主との利益配分・資本政策の調整を併せて見る必要があります(第216回定時株主総会招集通知)。

順位 株主 株式種類 所有株式数(千株) 持株比率
1 REVIC C種優先株 115,504 66.70%
2 日本マスタートラスト信託銀行 普通株 5,184 2.99%
3 三菱UFJ銀行 普通株 2,334 1.34%
4 State Street 505223 普通株 1,398 0.80%
5 ユニチカ従業員持株会 普通株 984 0.56%

(出典: 第216回定時株主総会招集通知。比率はC種を含む同資料の全株式基準で、普通株だけの持株比率ではない。)

2026年9月1日に公表された東証所属業種の変更は10月1日付で実施され、区分は「繊維製品」から「化学」となりました。
過去のEDINET業種タグや業界中央値は分類変更前の参考値を含むため、現在の同業比較と分けて扱います(業種変更開示)。

データ時点と出典

主な一次資料(製品、訴訟、所属業種、株価、同業データの出典は各節・表の直後に記載): FY2026/3決算短信、FY2027/3第1四半期決算短信、第216回株主総会資料、C種優先株条件、IRカレンダー。