📚 業界ノート

キッコーマン株式会社

【経済・食料品】食料品企業バリュエーション分析更新 2026-10-04

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目次
  1. 1. 事業をどう理解するか
  2. 収益源とセグメント構成
  3. 製品・地域の動き
  4. 需要、コスト、取引関係
  5. 競争上の土台
  6. 2. 財務・業績の質
  7. 5年の推移(PL・BS・CF統合)
  8. 運転資本
  9. 財務健全性チェック
  10. 直近開示と会社計画
  11. 3. バリュエーション
  12. 市場データと基準日
  13. 標準NC・広義NCAVと算定限界
  14. バリュエーションの読み方
  15. 4. 同業他社比較
  16. 選定企業との比較
  17. 5. 主要リスク
  18. 最大リスク: 海外卸売の薄い利益率とコスト・為替の重なり
  19. バリュートラップとなる条件
  20. 6. バリュエーション統合と論点整理
  21. 乖離の構造分析
  22. 条件分岐シナリオ
  23. 監視ポイント
  24. M&A・出資の検討論点
  25. 7. 学びのポイント
  26. 📚 着眼点 1: 卸売の売上構成と利益率を別々に見る
  27. 📚 着眼点 2: 設備投資を現金創出と稼働実績につなげる
  28. 📚 着眼点 3: 指標ポジショニングに成長率と利益構成を重ねる
  29. ガバナンス・株主構成・データ時点
  30. 参照資料

キッコーマン株式会社(2801)銘柄分析レポート

要点
  • 醤油・食品製造と海外卸売を持ち、FY2022/3–FY2026/3売上高CAGRは9.6%。FY2026/3営業利益率10.19%、営業利益成長3.04%、純利益成長△0.13%だった。
  • 現金同等物1,117.7億円−借入金182.2億円の標準NC代理値は935.5億円(時価総額比5.86%)。証券値未取得のためNCAVは確定できない。会社定義FCF310.2億円はCFO+CFI472.6億円と異なる。
  • 2026-10-02終値1,647.5円で予想PER24.90倍・PBR2.72倍・実績EV/EBITDA14.64倍。最大の確認点は売上58.1%を占める海外卸売の利益率7.09%、設備投資の回収とFY2027/3純利益計画△0.5%。
主要指標 値 算式・対象期 出典・留意点
時価総額 1兆5,971億円 2026-10-02終値×発行済株式969.416百万株 自己株式を含む発行済株式数基準
予想PER 24.90倍 1,647.5円÷FY2027/3予想EPS66.16円 1株指標基準
EV/EBITDA(実績) 14.64倍 時価総額−標準NC代理値、FY2026/3 EBITDA EBITDA=営業利益759.4億円+減価償却費267.5億円
配当利回り 1.52% FY2027/3予想配当25円÷終値 会社予想
標準NC代理値・比率 FY2025/3 879.4億円・5.51% → FY2026/3 935.5億円・5.86% 現金+短期有価証券−借入金・社債等 短期有価証券は未取得。借入金ベース
広義NCAVの算定基礎 FY2025/3 1,639.7億円・10.27% → FY2026/3 1,581.6億円・9.90% 流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計 投資有価証券を加算する前の値。広義NCAVは算出不可
CN-PER(標準NC代理値) 24.53倍 時価総額ベースPER26.05×(1−NC比率5.86%) 1株ベース換算は23.38倍
財務健康スコア 93/100 EDINET DB参考スコア 信用格付けではない

出典:EDINET E00435(FY2026/3・FY2027/3 Q1)、Yahoo!ファイナンス(2026-10-02)。

1. 事業をどう理解するか

業界の構造は食料品業界基礎ガイドを参照。本章では同社固有の事業を整理する。

キッコーマンは子会社54社・持分法適用会社2社を統括する持株会社。醤油を核に調味料・食品・飲料を製造し、海外食品卸売も行う。FY2026/3売上高は7,455.4億円。

収益源とセグメント構成

FY2026/3報告セグメント セグメント売上高 構成比 セグメント利益 利益率
海外食料品卸売 4,328.0億円 58.1% 306.7億円 7.09%
国内食料品製造・販売 1,557.2億円 20.9% 98.9億円 6.35%
海外食料品製造・販売 1,494.9億円 20.1% 409.3億円 27.38%
国内その他 75.3億円 1.0% 16.3億円 21.61%

出典:EDINET E00435、FY2026/3セグメント情報(連結)。

構成比は報告行合計を分母とする。
セグメント利益合計831.1億円と連結営業利益759.4億円の差△71.7億円は全社・消去等。売上58.1%・利益率7.09%の海外卸売と利益率27.38%の海外製造の構成が連結利益率を左右する。 報告セグメント値を連結売上高へ単純按分していない。

製品・地域の動き

FY2026/3は「いつでも新鮮」が堅調、PET醤油・業務用・ソース類は弱含み。「うちのごはんVege」、デルモンテ調理用ソース、無調整・200ml豆乳が伸び、ワインは減収。

一部値上げは2026年3月。数量・価格・構成・為替の寄与は分離開示されていない。海外製造・卸売は北米、欧州、アジア・オセアニアの各地域で増収し、為替・物流・現地競争の影響を受ける。

ウィスコンシン第3工場は2024年4月着工、2026年5月発酵開始、初出荷は同年10月予定。9月18日に竣工式を開催したが、初出荷は予定段階。

稼働率・品質・物流・需要・投下資本利益を追う。主に見込み生産で、有報の受注状況欄は該当事項なしとして扱われる。

需要、コスト、取引関係

売上は家庭用・業務用数量、単価、商品構成、外貨換算で動く。FY2026/3に10%超の主要顧客開示はなく、顧客集中度は定量評価できない。

原材料・包装・エネルギー・物流費が採算を左右する。固定費比率・損益分岐点は非開示で、数量減への利益感応度は未算定。

FY2026/3研究開発費は52.36億円。
有報によると、加工食品・清涼飲料のデルモンテ商標永久使用権(日本・フィリピンを除くアジア太平洋)は2026-03-19にDel Monte International GmbHへ移転した。
ヒゲタ醤油の代理店販売契約は1966年から継続・年次更新だが、契約条件と売上依存度は非開示。

競争上の土台

競争力は醤油ブランド、醸造技術、各地の製造・販売網、卸売網、業務用と家庭用の接点にある。地域の製造と販売網の組合せが販路を支える。 日本の成熟カテゴリー、海外企業との競争、為替・物流条件の中、新商品を家庭用・業務用に定着させる必要がある。

2. 財務・業績の質

5年の推移(PL・BS・CF統合)

EDINET連結値を億円換算。EPS・BPS・配当は分割調整後。会社定義FCFは営業CFに固定資産取得・売却を反映した値。FY2022/3は取得範囲外。

指標 FY2022/3 FY2023/3 FY2024/3 FY2025/3 FY2026/3
売上高(億円) 5,164.4 6,189.0 6,608.4 7,089.8 7,455.4
売上原価(億円) 3,376.1 4,144.7 4,321.1 4,697.5 4,929.3
売上総利益(億円) 1,788.3 2,044.3 2,287.2 2,392.3 2,526.1
売上高成長率 — 19.8% 6.8% 7.3% 5.2%
営業利益(億円) 506.8 553.7 667.3 737.0 759.4
営業利益率 9.81% 8.95% 10.10% 10.40% 10.19%
純利益(億円) 389.0 437.3 564.4 616.9 616.2
EPS(円) 40.59 45.67 59.19 64.99 65.99
総資産(億円) 5,030.6 5,663.9 6,678.8 6,794.1 7,516.6
非流動資産(億円) 2,628.7 2,851.7 3,253.9 3,445.6 4,027.6
流動資産(億円) 2,401.9 2,812.1 3,424.8 3,348.5 3,489.0
流動負債(億円) 832.3 987.6 950.7 880.5 1,060.1
負債合計(億円) 1,452.5 1,558.7 1,765.2 1,708.8 1,907.4
利益剰余金(億円) 2,971.2 3,294.8 3,763.1 4,152.2 4,503.3
親会社所有者帰属持分(億円) 3,578.2 4,105.1 4,913.6 5,085.4 5,609.2
自己資本比率 71.1% 72.5% 73.6% 74.8% 74.6%
売上債権(億円) 694.1 750.7 838.2 825.8 906.4
棚卸資産(億円) 827.0 922.2 949.7 1,049.0 1,103.6
仕入債務(億円) 595.7 613.3 650.6 606.5 720.0
借入金・社債等(億円、リース除く) 175.0 174.5 181.7 182.4 182.2
リース負債(億円) 259.6 335.3 417.4 405.9 432.1
BPS(円) 373.63 428.78 516.42 539.54 605.40
営業CF(億円) 520.9 592.0 808.1 739.8 905.1
投資CF(億円) △161.1 △266.2 △429.9 △384.6 △432.5
財務CF(億円) △179.0 △203.8 △314.2 △460.9 △530.9
会社定義FCF(億円) — 327.6 498.4 333.7 310.2
現金及び現金同等物(億円) 792.3 993.5 1,191.6 1,061.8 1,117.7
減価償却費(億円) 200.3 222.4 241.2 269.2 267.5
設備投資(億円) 246.2 382.3 435.0 468.4 709.1
年間配当(円) 12.2 15.6 20.8 25.0 25.0

出典:EDINET E00435・S100YE5V、会社「主要な指標の推移」。親会社持分で5期統一。証券値の未取得はゼロ扱いせず、借入金等とリース負債を分けた。

FY2026/3のCFO+CFIは472.6億円、会社定義FCFは310.2億円で別指標。

運転資本

FY2026/3末の売上債権906.4億円・棚卸1,103.6億円・仕入債務720.0億円から、売上高・売上原価と365日換算でDSO44.4日、在庫81.7日、仕入債務53.3日、CCC72.8日(FY2025/3は76.9日)。
期末残高による概算で、季節性を含む会社非公表KPI。
債権・在庫の増加を踏まえ、短縮継続を確認する。

財務健全性チェック

食料品中央値はFY2026/3の101社。借入金と現金の比較は短期有価証券・リース負債を除く定義とし、全有利子負債はバリュエーション章に示す。

確認項目 FY2026/3実績 食料品中央値 / 判定基準 判定と読み方
自己資本比率 74.6% 60.5% / 40%超 ✅ 中央値・基準を上回る
借入金・社債と現預金 182.2億円 / 1,117.7億円 借入金 < 現預金 ✅ 借入金定義ではネット現金
流動比率 329.1% 189.5% / 150%超 ✅ 短期負債に対し余裕がある
利益剰余金 4,503.3億円 0超 ✅ 蓄積はプラス
営業CF FY2024/3–FY2026/3で3期黒字 3期連続黒字 ✅ 継続して本業から現金を創出
年間配当 FY2024/3–FY2026/3で3期支払い 3期連続支払い ✅ 1株配当20.8円、25円、25円
EPS成長率(FY2026/3対FY2025/3) +1.5% プラス ✅ 65.99円、FY2025/3は64.99円
ROE 11.52% 6.83% / 8%超 ✅ 中央値・基準を上回る
営業利益率 10.19% 3.95% ✅ 食料品中央値を上回る

出典:EDINET E00435・EDINET DB。財務健康スコア93/100は参考値で格付けではない。会社定義FCFはFY2025/3の333.7億円からFY2026/3の310.2億円へ減少。

直近開示と会社計画

2026-08-05開示のFY2027/3 Q1累計は売上2,020.3億円、営業利益246.3億円、純利益190.2億円(FY2026/3 Q1累計比+15.0/+29.0/+24.4%)。

FY2027/3会社予想は売上7,991億円・営業利益788億円・純利益613億円、EPS66.16円、配当25円(FY2026/3実績比+7.2/+3.8/△0.5%)。
進捗25.3/31.3/31.0%は季節調整前。
Q2発表予定は2026-11-09。

FY2026/3 Q3時点予想(2026-02-05)7,310/750/600億円に対し、実績は7,455.4/759.4/616.2億円と+2.0/+1.3/+2.7%。
比較可能な複数年履歴はなく、予想精度を一般化できない。

3. バリュエーション

市場データと基準日

2026-10-04は日曜のため、2026-10-02終値1,647.5円を使用。
発行済株式969.416百万株、自己株式42.873百万株、控除後926.543百万株。
時価総額は終値×発行済株式、PER・PBRは終値と分割調整後EPS/BPSを使い、株式数基準差は4.63%で±5%内。
出典:株価履歴、FY2027/3 Q1短信。

標準NC・広義NCAVと算定限界

標準NC=現金+短期有価証券−借入金・社債等。現金1,117.7億円−借入金等182.2億円=935.5億円(5.86%)だが、証券値未取得の借入金ベース代理値。

会社IRの全有利子負債646.47億円を使うとNC471.2億円・比率2.95%・EV/EBITDA15.09倍。
EBITDAは営業利益759.40億円+減価償却費267.46億円=1,026.86億円、借入金ベースEV/EBITDAは14.64倍。

広義NCAV=流動資産+投資有価証券×0.7−負債合計。証券加算前はFY2025/3 1,639.7億円(時価総額比10.27%)、FY2026/3 1,581.6億円(9.90%)。

投資有価証券が未取得のため正式NCAV・比率・EVは算定不能。基礎値を清算価値や安全余裕とはみなさない。

バリュエーションの読み方

時価総額÷予想純利益のPERは26.05倍。現金代理値控除後のCN-PERは24.53倍(時価総額基準)、1株換算は23.38倍。無調整の1株PER24.90倍とは分母・計算基準が異なる。

FY2026/3 EBITDA=営業利益759.40億円+減価償却費267.46億円=1,026.86億円。
純利益感応度は△10%の551.7億円でPER28.95倍、基準613.0億円で26.05倍、+10%の674.3億円で23.69倍(時価総額一定)。

評価軸 低位観測 現行・基準値 高位観測 比較の根拠・注意
自社PER 21.7倍 24.90倍(会社予想) 40.1倍 FY2022/3–FY2026/3観測値。FY2022/3はEDINET DB、直近4期は会社IR
選定2社の予想PER 23.01倍 31.58倍(2社平均) 40.14倍 キユーピー・味の素。成長率・事業構成は異なる
EV/EBITDA 10.17倍 14.64倍(自社実績) 18.77倍 キユーピー・自社・味の素。標準NCのデータ範囲差に留意
食料品PER中央値 — データなし — FY2026/3業界ベンチマークにPER中央値なし

出典:キッコーマン指標、EDINET DB食料品ベンチマーク、同業2社の終値・決算情報。

DCFは一貫した5期FCF予測と資本コスト・永続成長率を裏付けられず省略。

4. 同業他社比較

選定企業との比較

味の素・キユーピーを加工食品・調味料の比較対象とした。
株価は2026-10-02終値。
味の素はFY2026/3 IFRS(EDINET E00436、S100Y992)、キユーピーはFY2025/11日本基準(E00464、S100XMJE)。
価格:味の素、キユーピー。

指標 キッコーマン 味の素 キユーピー 算定基準
時価総額(億円) 15,971.1 50,959.6 6,020.8 2026-10-02終値×発行済株式
売上高(億円) 7,455.4 15,837.2 5,134.2 FY2026/3・IFRS、FY2025/11・日本基準
予想PER 24.90倍 40.14倍 23.01倍 各社の最新会社予想EPS
PBR 2.72倍 6.48倍 1.83倍 各社の直近通期BPS
ROE(純利益÷平均純資産) 11.52% 16.25% 8.98% 各社の直近通期から同一算式で計算
営業利益率 10.19% 12.59% 6.74% 各社の直近通期
自己資本比率 74.62% 46.58% 72.34% 各社の直近通期
配当利回り 1.52% 0.96% 1.53% 予想年間配当÷2026-10-02終値
EV/EBITDA 14.64倍 18.77倍 10.17倍 EV÷(営業利益+減価償却費)
標準NC比率 5.86% △6.18% 10.57% (現預金等−開示借入金等)÷時価総額
営業CF(億円) 905.1 2,393.5 318.0 各社の直近通期
売上高推移(億円・3期) 6,608.4→7,089.8→7,455.4 14,392.3→15,305.6→15,837.2 4,550.9→4,839.9→5,134.2 各社直近3期。キユーピーはFY2023/11–FY2025/11
営業利益率推移(3期) 10.10→10.40→10.19% 10.19→7.45→12.59% 4.33→7.09→6.74% 同上。決算期・基準の違いに留意
売上債権回転日数 44.38日 21.77日 53.40日 期末残高・売上高を基礎にしたEDINET DB値
棚卸資産回転日数 81.72日 117.88日 42.55日 期末残高・売上原価を基礎にしたEDINET DB値
仕入債務回転日数 53.32日 34.73日 44.97日 期末残高・売上原価を基礎にしたEDINET DB値
CCC 72.78日 104.92日 50.99日 業界中央値は未取得。期間差がある概算比較

出典:EDINET E00435・E00436・E00464、各社決算・有報、株価履歴(2026-10-02)。
決算期・会計基準は異なる。
3期推移は最新連続通期、CCCは期末残高ベースで業界中央値なし。

PERは終値÷会社予想EPS(自社66.16円、味の素129.84円、キユーピー184.95円)、PBRは直近通期BPS、ROEは純利益÷平均純資産。

EV/EBITDAは開示範囲が異なる概算。自社は現金のみ、味の素はネット有利子負債、キユーピーは現金・短期証券−借入金等。

営業利益率10.19%は味の素12.59%とキユーピー6.74%の間、自己資本比率74.62%は両社(46.58%、72.34%)超。
商品構成・海外比率・会計基準・成長見通しが異なり、倍率差だけでプレミアムを判断できない。

CCCは期末残高概算で決算期も異なるため、短さを優劣とせず売掛金・在庫・買掛金の構成を確認する入口とする。

比較対象は食料品分類の味の素・キユーピー。全上場食料品の一部中央値と国内醤油シェアは同一定義の値がなく推定していない。

5. 主要リスク

リスク要因 影響度 発生可能性 具体的影響シナリオ 現在の対応・観察点
為替・原材料・物流費 大 構造的に継続 外貨換算や調達・運賃の逆風が販売価格への転嫁に先行し、製造利益率が下がる FY2026/3に一部価格改定。数量・単価・為替を分けた説明を追う
国内成熟カテゴリーとブランド競争 中〜大 継続 PET醤油、業務用、食品ソースの弱さが新商品の伸びを相殺する 新商品と主力カテゴリーの販売状況を確認
海外卸売の低採算 大 常時の構造要因 売上の58.1%を占める部門で利益率が小幅低下しても、連結利益成長が鈍る 売上成長とセグメント利益率の差を追う
新工場・設備投資と運転資本 大 FY2026/3以降も継続 立ち上がり遅延や低稼働、在庫・債権増加でキャッシュ回収が遅れる ウィスコンシン工場の出荷・稼働、CCC、営業CFを確認
資本配分・政策保有株式 中 継続 大型投資の回収が遅れ、政策保有縮減や株主還元が計画より進まない FY2026/3に6銘柄縮減、残高は資本の8.9%。FY2027/3も縮減方針

出典:FY2026/3有報・決算、2026-09-18米国工場発表。影響度・可能性は定性評価。

有報は原材料、為替、海外事業、品質、安全、規制、人材等をリスクに挙げる。

投資は稼働・利益・現金回収まで追う。信託名義と大量保有報告の集計差を保ち、株主関与を推認しない。

最大リスク: 海外卸売の薄い利益率とコスト・為替の重なり

海外卸売は売上の58.1%・利益率7.09%。
現地需要が弱まる、物流・仕入費が価格転嫁に先行する、為替が売上と費用に逆方向へ動く場合は、売上増でも利益が伸びない。
国内数量の弱さが重なると原価上昇の吸収余地も狭まる。
数量・価格・為替・構成の一貫した分解値はなく、セグメント利益率と営業CFで現地採算を追う。

バリュートラップとなる条件

現金同等物はFY2022/3の792.3億円からFY2026/3の1,117.7億円に増加。
FY2026/3末の借入金等182.2億円、リース負債432.1億円、会社定義全有利子負債646.47億円から、現金−借入金NC比率5.86%は全有利子負債ベースで2.95%となる。

FY2025/3・FY2026/3配当は各25円、FY2027/3予想も25円。
投資継続下では配当だけで資本活用を判断できない。
東証は資本コストを意識した経営を要請するが、個別計画は確認できず、政策保有株の縮減が把握できた動き。
資料上、株主提案・アクティビストの影響は確認できない。
投資回収が遅れ、現金が積み上がる一方でROE・利益率が低下し、資本政策の説明も進まなければ、財務余力が成長価値に結び付かない評価リスクが高まる。

6. バリュエーション統合と論点整理

乖離の構造分析

FY2027/3予想PER24.90倍は会社IRの直近4期21.7–33.3倍内。EDINET DBのFY2022/3 40.1倍を含む5期は21.7–40.1倍。

選定2社の予想PER23.01–40.14倍、PBR1.83–6.48倍。少数比較で業界の適正倍率は示さない。

ROE11.52%・営業利益率10.19%は食料品101社中央値超だが、営業利益成長3.04%は5.61%未満、FY2027/3純利益予想も0.5%減。利益率維持と新工場・運転資本の回収が評価持続の条件。

NC比率は現金−借入金ベース5.86%、全有利子負債ベース2.95%。
証券値不明で広義NCAVも確定できず、現金だけで倍率差は説明できない。
投資回収が遅れ、現金増と同時にROE・利益率が下がり資本配分の説明も進まなければ、資本余力が成長価値に結び付かない。

条件分岐シナリオ

海外製造・新工場の利益寄与が進む場合

北米・欧州需要を保ち、ウィスコンシン工場の出荷・稼働が進み、営業利益率10.19%と投資後の営業CFを維持する場合。
複数期確認できれば、利益成長・ROIC・製造利益を重視し、自社PER帯の中央〜高位を検討する根拠となる。

会社計画に近い利益と安定した事業構成の場合

海外事業が拡大し国内が横ばい、立ち上げ費用を吸収しFY2027/3計画近辺で着地する場合。利益率・ROEを維持すれば、同業倍率比較を投資回収と自己資本の厚さに照らして評価する。

コスト・数量・投資回収が同時に悪化する場合

為替・原材料が逆風となり国内数量が弱まり、工場稼働が遅れて営業利益率が10.19%を下回る場合。
利益成長の評価後退とともにPER・EV/EBITDAが各比較レンジの低位へ向かい、現金代理値だけでは下支えにならない可能性がある。

監視ポイント

時期 イベント 開示で確認すべき点
2026-11-09 FY2027/3 Q2決算発表予定 累計売上・営業利益・純利益と会社計画の修正
2026-11-09 同決算のセグメント開示 海外卸売の利益率、海外製造の利益構成
2026-11-09 国内事業の進捗 PET醤油・業務用・食品ソースの動き、新商品の継続性
2026-11-09 米国第3工場の状況 初出荷の開始、稼働・品質・立ち上げコスト
2026-12-31 FY2027/3第3四半期の期間末 売上債権・在庫・営業CFと通期予想の進捗
2027-03-29 期末配当の権利付最終日(予定) 会社が定める配当基準日と権利日程。3月31日基準日から2営業日前の算定
2027-03-31 FY2027/3期末 設備投資、減価償却、キャッシュ・運転資本の着地
2027-03-31 政策保有株式の年度確認 会社方針に沿った縮減額と保有比率
2027-03-31 年間配当の基準日 年間配当25円予想、配当性向、投資との資金配分

次回決算日は会社IRスケジュール、配当基準日は株主メモで確認。3月31日基準日の権利付最終日は市場慣行から算出した予定日で、会社発表後に更新する。

M&A・出資の検討論点

許容EVは安定利益、維持投資、運転資本、税・為替、買収後の資本回収、のれん負担で決める。証券値が未取得で全有利子負債ベースのNCも小さく、現金総額だけでは買収余力を測れない。

シナジー候補は現地販売網への商品追加、拠点・物流共有、技術移転。ブランド重複、嗜好差、品質統合、物流・在庫の重複は減殺要因となる。

DDでは食品安全・表示・品質事故、商標・ライセンス、工場稼働率・更新投資、取引先依存、在庫評価、環境・税務・偶発債務、人材を確認する。検討案件や許容EVの開示はない。


7. 学びのポイント

📚 着眼点 1: 卸売の売上構成と利益率を別々に見る

FY2026/3海外卸売は売上の58.1%・利益率7.09%、海外製造は20.1%・27.38%。卸売の規模と製造の採算を分け、全社費用・消去後に残る利益を追う。

📚 着眼点 2: 設備投資を現金創出と稼働実績につなげる

設備投資はFY2026/3に709.1億円(減価償却費の2.65倍)、会社定義FCFはFY2025/3の333.7億円からFY2026/3の310.2億円へ減少。
米国新工場の出荷・稼働、粗利、CCC、営業CFで回収を追う。

📚 着眼点 3: 指標ポジショニングに成長率と利益構成を重ねる

PER24.90倍は同業平均31.58倍未満、自社5期21.7〜40.1倍内。ROE・利益率は中央値超でも、営業利益成長3.04%は5.61%未満。成長・利益構成も合わせて読む。

食料品中央値はEDINET DBのFY2026/3・101社集計。比較対象の決算期・会計基準・事業構成が異なるため位置の目安とし、未取得値は推定しない。

指標 キッコーマン 選定同業平均 食料品中央値 全上場中央値 判定基準・読み方
予想PER 24.90倍 31.58倍 未取得 未取得 自社5期観測値21.7–40.1倍の範囲。FY2022/3はEDINET DB
PBR 2.72倍 4.16倍 未取得 未取得 自己資本利益率・成長期待・会計基準と合わせて比較
ROE(純利益÷平均純資産) 11.52% 12.62% 6.83% 未取得 食料品中央値と8%基準を上回る
営業利益率 10.19% 9.67% 3.95% 未取得 食料品中央値を上回るが、FY2026/3の利益成長は3.0%
自己資本比率 74.62% 59.46% 60.52% 未取得 財務余力の参考。高比率だけで資本効率を判断しない
売上高成長率 5.15% 未算定(決算期差) 2.92% 未取得 FY2026/3実績。為替・数量・価格の内訳は別途確認
営業利益成長率 3.04% 未算定(期間差) 5.61% 未取得 FY2026/3実績は業界中央値を下回る
純利益成長率 △0.13% 未算定(期間差) 7.20% 未取得 FY2026/3実績。FY2027/3会社予想も△0.5%
予想配当利回り 1.52% 1.25% 2.30% 未取得 FY2027/3会社予想配当25円を使用
予想配当性向 37.8% 未算定(基準差) 36.18% 未取得 FY2027/3予想配当÷予想EPS。投資資金との両立を見る
EV/EBITDA 14.64倍 14.47倍 未取得 未取得 標準NC代理値ベース。負債・現金の開示範囲に差
標準NC比率 5.86% 2.20% 未取得 未取得 借入金等ベース。短期有価証券未取得の代理値

注:同業平均は味の素・キユーピーの単純平均。EV/EBITDAは直近通期EBITDAと開示範囲に応じたネットキャッシュ・負債の概算。

ガバナンス・株主構成・データ時点

FY2026/3有報記載は社長・中野祥三郎氏、会長・堀切功章氏、設立1917-12-07、従業員7,911人、監査人・太陽有限責任監査法人。
取締役13名中、社外7名・女性3名。
主力銀行は特定できず、三菱UFJ信託銀行は名簿管理人。
拠点は北米・欧州・アジア太平洋。有報・株主メモ。

上位株主は2025-03-31時点の名義別構成。大量保有報告は別日・運用グループ単位で、比率だけから経営関与を推認しない。

項目 基準日・対象 内容
財務数値 FY2026/3(2026-03-31終了) 連結通期実績。IFRS
最新開示 2026-08-05 FY2027/3第1四半期決算短信・会社計画
市場データ 2026-10-02 直近営業日終値。レポート日2026-10-04は日曜日
上位株主 2025-03-31 日本マスタートラスト信託銀行19.00%、日本カストディ銀行8.33%、千秋社3.56%、茂木佐3.26%、明治安田生命保険2.63%
大量保有報告 2025-09-19 三井住友トラストグループ合計6.38%。運用会社等を含む報告
大量保有報告 2023-10-16 MUFGグループ4.70%。株主名簿の名義別比率とは基準が異なる

参照資料

金額は円建て。億円換算は小数第1位。運転資本日数・EV/EBITDA・NC代理値は概算。